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プライス博士とビタミンK2、虫歯とビタミンK2

プライス博士とビタミンK2 | ナカムラクリニック|内科・心療内科・精神科|神戸市中央区(花隈 元町 三宮)

1925年、プライス博士は思い立って、妻とともに世界一周の旅に出た。
無論、観光のためではない。現代文明と接点を持たない原住民族の歯の健康を調べることが、彼の目的だった。
訪れる村々で、彼は原住民の歯の美しさに圧倒された。
虫歯の一切ない輝かしい歯列は、アメリカではまず目にすることのないものだった。
部族社会には歯磨き習慣も歯医者も存在しない。それなのに、彼らは見事な歯を保っているのだった。

一方1920年代は、西洋文明の波がそうした未開部族にも容赦なく押し寄せ、飲み込もうとしている時代だった。部族で代々受け継がれた伝統的生活様式と、合理性と利便性を旨とする西洋文明がせめぎ合う、ちょうどその端境期だった。
この時期に世界を旅したプライス博士は、伝統的な習慣を捨て西洋文明を採り入れた原住民の健康が、いかに容易に失われるかをも観察することになった。

ベルギー領コンゴにて。白人がコーヒー栽培のプランテーションを始め、そこで働いている人たち。伝統的な食事をとることをやめ、配給される白小麦、砂糖、缶詰などを食べるようになったところ、虫歯、歯周病をはじめ、様々な全身性疾患にかかるようになった。

フィジーにて。基本的に南洋の人は自殺しないが、自殺の唯一の理由は、虫歯の耐え難い痛みによるもの。下段は、欧米の食事を食べるようになった親世代に生まれた子供。叢生歯、犬歯の先鋭化、顔面の未発達(顎の狭小化、鼻孔の狭小化など)が見られる。精製糖質の摂取に伴い免疫力が低下し、鼻孔の狭小化による口呼吸と相まって、呼吸器感染症などにもかかりやすくなる。

彼は原住民が伝統的に食べているものを細かく観察し、さらにその食材を科学的に分析することで、原住民食には現代アメリカの典型的な食事と比べて、水溶性ビタミンが4倍以上、脂溶性ビタミンが10倍以上含まれていることに気付いた。「健康な歯を保つには、脂溶性ビタミンこそがポイントではないか」というのが彼の直感である。
プライス博士は当時一流の生化学者でもあって、ビタミンAやDの発見の経緯も実地に追いかけていたし、発見者とも直接的な交流があった。グラスフェッドバターやタラの肝油のなかに、ビタミンAでもDでもない、未だ発見されていない脂溶性ビタミンがあることを彼は見出した。彼はこれをactivator X(活性因子X)と名付け、この効用を動物実験、あるいは自分のクリニックの患者への投与で確認した。
その効果は驚くべきものだった。
彼は、もはや虫歯を削るドリルや穴を埋める歯科金属を必要としなくなった。原住民の食事を参考にした食生活の指導と、プライス自家製のオイルによって、彼はついに、虫歯を治すことに成功したのだった。

虫歯って治るのか
虫歯の治癒ばかりではない。
食生活の改善とこのオイルの使用によって、彼は様々な現代病(感染症、心血管障害、骨粗鬆症、糖尿病、不妊症など)が改善することを観察し、症例を報告した。

虫歯の原因は不十分な歯磨きによる口腔内の不衛生であり、叢生歯は遺伝によって起こり、不正咬合は指吸が原因で、虫歯が自然治癒することは決してない、ということが定説として歯学部で教えられている。
ぜーんぶ、ウソだっていうね。歯学部の学生さん、ごくろうさま^^;

ハハハ

さて、活性因子Xという物質が具体的に一体何なのかということについては、学者の間で長い議論があった。必須脂肪酸ではないかという者もあれば、エイコサペンタエン酸(EPA)ではないかという者もあり、決定的な説の出ないまま、プライスの提唱から70年の時が流れた。
その本態が特定されたのは、2007年と比較的最近のことである。それはビタミンK2だった(Chris Masterjohn著 Wise Traditions 2007)。

最近僕も臨床でビタミンK2やタラの肝油を使い始めたところ、ナイアシンやビタミンCではイマイチよくならなかった患者たちが、次々と改善し始めた。ビタミンK2は、ホッファーやポーリングが見落としていた栄養療法における最後の盲点だと言えるかもしれない。
納豆が体にいいのも、納豆菌が腸内細菌叢に働きかけるから、という機序以外に、そのビタミンK2含有量の豊富さの影響もあるに違いない。あたたかいご飯の上にグラスフェッドバターをひとかけら乗せて、さらに納豆も併せて食べれば、いい感じでビタミンK2を補給できるはずだ。
ビタミンD3を使うときには、ぜひともビタミンK2を併せて(必要に応じてビタミンAも)使いたい。脂溶性ビタミンは協調して働くものだから。ただしビタミンEについてはK2と効果を相殺してしまうのではないかという説もあって、このあたりは慎重に。

 

虫歯とビタミンK2 | ナカムラクリニック|内科・心療内科・精神科|神戸市中央区(花隈 元町 三宮)

口の中の未消化な糖質をもとにしてエネルギー産生を行い、酸を分泌する。これが歯のエナメルに慢性的に付着すると、いわゆる虫歯が発生することになる。
だから、糖質を食べたときにはきちんと歯を磨けばいい。口腔内を清潔に保つことで虫歯の可能性を減らすことができる。

というのが、現在の虫歯予防についての一般的な考え方だ。
しかし、現実にはどうですか?
糖質制限を徹底し、毎日歯ブラシとフロスによる清掃を欠かさず、定期的に歯医者で歯石の除去までしてもらっているのに、それでも虫歯にかかる人がいる。
日本人は、世界でもトップレベルに歯磨きを徹底している民族だ。1歳以上の人の9割以上が毎日歯を磨き、毎日2回以上磨く人も8割近い、という統計がある。
それなのに、日本人の虫歯の有病率はざっと8割。歯周病の割合もおおよそ8割だ。
現実が理論を否定している、と思いませんか。
つまり、これだけせっせと歯磨きをしているのに、虫歯も歯周病も減っていないということは、「酸腐食による虫歯発生説」は一体正しいのだろうか、あるいは少なくとも、この理屈だけで虫歯を説明するのは無理があるのではないか、という疑問が当然わいてくるだろう。

確かに

プライスはこう言っている。
「原住民族の多くはデンプン質の食べ物を食べて歯を汚し、しかも歯磨きで歯を清潔にする努力などまったく行っていないが、それでも彼らには虫歯が皆無である」
一体なぜ、彼らは虫歯にならないのか。
その核心こそ、ビタミンK2である。

プライスは、ひどい虫歯の患者の唾液中には、好酸性乳酸桿菌が高濃度に含まれていることを観察した。平均して、唾液1ミリリットルあたりに32万3千個だった。
そうした患者に対して、グラスフェッドバターから作ったプライス特製のオイル(つまりビタミンK2含有オイル)を用いて治療すると、細菌数は平均1万5千個に減少した。
実に、95%の減少ということになる。なかには、細菌数が実質ゼロになった患者もいた。

ビタミンK2の摂取により唾液の性質がどのように変わるのかを、別の切り口から検証した研究がある。
ひどい虫歯の患者から採取した唾液と、骨片を触れ合わせると、骨片に含まれるミネラルが唾液中に移行した。
しかし、これらの患者をビタミンK2で治療した後に同様の実験を行うと、今度は逆に、唾液中のミネラルが骨片に移行したという。
実は唾液腺は、人間の体にある臓器のなかでビタミンK2の濃度が二番目に高い部位である(一番高いのは膵臓)。

ビタミンK2の摂取によってオステオカルシンやMGPが活性化し、これがカルシウムなどのミネラルを歯に呼び込む働きをした。これがミネラル沈着の核心だ。

まとめると、ビタミンK2が虫歯を抑制するメカニズムとして、二つの機序を考えることができそうだ。
つまり、虫歯の原因菌の数自体を減少させる作用と、脱灰防止およびミネラル沈着作用である。

脂溶性ビタミン(A、D3、K2)の有効性を認識しそれを自分の患者に使い始めて以後、プライスはドリルや歯科金属をほとんど必要としなくなった。
具体的には、今のようにお手頃なサプリのない時代だったから、ビタミンAやD3の供給源としてはタラの肝油を、ビタミンK2の供給源としてはグラスフェッドバターを使っていた(日本人なら納豆もぜひ食べよう)。
これによって、患者の虫歯の進行が止まっただけではない。象牙質の成長とミネラル沈着が促進され、かつては虫歯の穴があいていたところに新たなミネラルの覆いが形成され始めた。
つまり、虫歯の治癒が可能であることを、彼は多くの患者で観察した。

歯と骨というのは相同の器官で、歯は、いわば、見える骨だ。
歯にいいことは、当然骨にもいい。
実際、虫歯治療を目的に来院した少年に対して食事指導を行ったところ、虫歯の治癒ばかりか、なかなか治癒しなかった骨折さえ治ったことを、プライスは報告している。
骨粗鬆症の治療にもビタミンK2は当然有効だ。

へえ〜、知らなかったなあ