アラフォー賢者の気ままな引き寄せライフ~第四密度行ったら本気だす~

気ままにスピ雑談、多少は人が見て勉強になりそうなことを書いていく

(本)ブライス家の人々 家族療法の記録、その十三

それから間もないある日のこと、デビットは面接が始まった直後からいつになく上機嫌だった

デビット「ボストンにある大会社から仕事の打診があったのです。でも、どうして私に興味を持ったのかはよくわからないのです。何か主席のポストを考えてくれているようなんです。ただ、家族の者がこの街を離れる気になってくれるかどうかは分かりません」

キャロリンは、みるみるうちに涙が溢れだし、「私は・・・もう・・・」というだけが精一杯の状態であった

キャロリン「生まれて初めて家から離れてなにか大切なことをしようとしているときに、突然この街を離れなければならないというような話が降って湧いたのですよ。私にとってはたった一つの住み慣れた所ですし、色々なつながりもある居心地の良い街なんです。少なくとも友達もいますからね。引っ越すことにでもなってごらんなさい。この人の行く世界は全てお膳立てされているところなんです。一から自分の世界をやり直さねばならないのはこの私ですからね。不公平だわ」

キャロリン「あなたは多分その仕事がお気に入りでしょうし、今度の申し出を受けると思うわ。そして、お義父様やお義母様と目と鼻の先で暮らすことになるんだわ。結局、私なんかただの主婦になってしまうんだわ。引っ越せば何か変わるかしら。ここにいれば少なくとも友達には恵まれているし。ともかく小さくっても自分の世界というものがありますから」

キャロリン「結局、あなたにとって本当に大切なものは仕事に関係したことだけなのよ。ここでの治療にしてもそうだわ。あなたは本気でやってみようとはしていないわ。口先では上手に言うけど、本心では変わりたくないのよ」

 

カール「この御仁(デビット)は自分が患者にならなくてすむように、ちょうどよい頃を見計らって、新しい仕事を見つけたのかも知れないな。それとも奥さん、あなたにあまり強くなられると困るからかもしれないですな」

この謎のタイミングの良さが家族力動の醍醐味である

家族全員が無意識でテレパシーで計画しているとか、シンクロニシティとか、超物理的な発想をしなければ説明が付かない

カール「お二人は古いタイプの結婚という枠の中で考えておられるようですね。仕事をめぐってどちらかが結婚のために犠牲にならざるを得なくなってしまうわけですが、私はそうじゃないと思いますよ。ご夫婦が何をされようと、やはりそれぞれが人間として生きていくことは出来ますし、結婚だってもっと発展的なものにしていけるはずなんです」

これがカールの人間観なんだろうね

 

デビットが二週間の予定でボストンへ出かける前に、もう一度この家族と会う機会があった

重苦しい沈黙の雰囲気は、われわれが示した解決のための提案が二人の間で真剣に取り上げられなかったことを物語っていた

夫は引っ越しに固執しており、妻は腹を立てていた

 

・ 現代の結婚契約の中には従来の功利的なものと異なり、新たに暗黙の条項が備わっている

性的な満足感、小説に出てくるような愛情関係、夫婦というより仲間としての安定感の保証

それに加えて、カールと私なら、過去の傷や生まれ育った家族で経験した不幸を癒やす一種の心理療法的な役割を果たすことも言っておきたい

多くの夫婦は当初の夢を捨てきれず、結婚に抱いた期待について考え直すこともせず、お互いにふさわしくない相手を選んだだけなのだと結論づけてしまう

彼らは夫婦という特別な関係が作られるのは努力によってではなく、運命によるものだという前提を壊さないために、その可能性を信じて別の相手を探し求めんがために離婚する

自己を十分に確立しない内に結婚してしまうと、離婚を早める原因の一つとなる

自分はたった独りでこの世に生きる存在に過ぎないという、人間としての根本的な不安に耐えうる経験をしておくことが必要なのである

人間はこの「不安に耐える」過程を通して、ある程度の自身をつけたり、自己認識を深めたりしながら、自分に忠実に生きることを学んでいくのである

多くの人は結婚を急ぐあまり、孤独の苦しさを噛み締めたり、自信を付けるために模索する機会を往々にして逃してしまう

別の家族への移動が性急になされると、自分の家族における未解決の問題が新たな結婚生活に持ち込まれる危険性が出てくる

 

伴侶の選択は人生で一番決断の要する出来事だと言っても過言ではない

それは当事者が結婚を決意すれば済むといった性質のものではなく、二人の決定よりもさらに強力な人間関係の相互作用という側面が持ち込まれるからである

この結婚相手を選ぶ作用は信じられないほどの「的確さ」で行われるように見える

こうして喜びや苦しみといったこととは無関係に、二人の人生の意味は伴侶の選択という事実に集約されてしまう

例えば、父親がアル中暴力男であるような娘は、明らかに喜び少なく苦しみが多いのに、「的確」にアル中暴力男と結婚する

これは個人の力を超えた家族の力って側面があるのだが、家族療法とかインナーチャイルドの理論を知っておかないと、それを発想することは出来ないだろう