「多重人格障害―その精神生理学的研究」に続き、これも私の高く評価する笠原敏雄の編集の本
偽薬効果に関する真面目な正統的研究の論文複数を一冊にまとめたもの
「多重人格障害―その精神生理学的研究」と同じ形式で構成されてる
当然、優れた内容である
・脊髄の手術、手術を受ける部位から血液を移動させる方法(そういうイメージ法のことかな)を術前に教えられた患者は失血が500ccですんだのに対し、教えられなかった患者は900cc
・胎児が逆子の妊婦に対し、催眠療法の中で自分の肉体や自然の力を信じるように励まし、逆子の理由を女性達とともに探った所、81%が正常位置になった
対して、催眠療法なしの女性では、48%が正常位置になった
・乾癬治療、瞑想とイメージ法をやりつつ光線療法を受けた人は、光線療法のみの人よりも50%早く中間治療点に達した
・砂浜にいる自分の乳房を太陽が温めている場面をイメージさせる催眠で、乳房を大きくさせる研究がある
・歯科手術、催眠で血液を別の部位に移すことにより失血が減らせると暗示すると、失血減る
・先天性魚鱗癬紅皮症、暗示によって数週間後8割きれいになったが、2割は難治のまま残った、それ以上心理療法・暗示をしても無効
心はできる限りのことをした後には、それ以上のことはできない
心が治療するに際して、我々が魚鱗癬の原因を知っている必要はない
心がこの症状を全て解消させた例はない、超えることの出来ない境界線がある、すると肉体もやはり力を持っている
うーむ、これが第三密度の限界ってやつなのか
・頭痛の患者199人、79人は偽薬で症状軽減なし、120人は軽減
(頭痛は心理的なものとも思えるので)術後の疼痛に関する研究から、偽薬は生理的原因によって発生した痛みも軽減しうる
偽薬の反応者と非反応者には、性別や知能に差なし、しかし心構え・習慣・学歴・人格構造などで有意な差があった
55%は偽薬で痛みを軽減したりしなかったり一貫しない、14%は一貫して偽薬に反応、31%は一貫して非反応
・総名1082人含む15件の研究で、偽薬が有意な効果をもたらした比率は平均35.2±2.2%
もっと比率に幅がある、という研究もある
平均35%だが、偽薬反応の発生率は15〜58%であったという
・偽薬の毒性、口渇77%、吐き気10%、だるさ18%、頭痛25%、集中困難15%、眠気50%、ほてり8%、体の弛緩9%、疲労感18%、入眠10%
偽薬にポジティブな効果があるならば、ネガティブな効果もあるよね
・不安と緊張を主訴とする患者31人で偽薬で30%軽快(自覚的症状)、振戦や発汗や頻脈などの他覚的症状は17%好転
そのうち3人は偽薬に大きな反応を示す
一人は抗しがたい脱力・発汗・吐き気
もう一人は発疹、これは皮膚科の顧問医により薬物性発疹と診断された
残る一人は、服用後10分以内に心窩部痛が起こり、続いて水様便、蕁麻疹、口唇に血管神経性浮腫
・最も不安の強い患者は、それほど不安の強くない患者と比較して、偽薬によって副腎皮質の活動が阻害される度合いが大きい
偽薬は不安の強い人ほど、よく効く
医師が最初に出現したのは紀元前2万年前のクロマニョン人の時代から
「クサリヘビの肉やカエルの精液、鹿の角、動物の排泄物、聖油」、その他奇怪な物質を処方していたにも関わらず、医師たちは人の役に立ち、尊敬された
このような無知や迷信にも関わらず、冠者を癒やすことが出来たに違いない
17世紀に入ってすら、現代科学の父とされるロバート・ボイルが多くの怪しげな治療法を削除した後で、「たくさん歩いた男性が履き古した」古靴の底の粉末を腹痛の治療用として薬局方に含めている
この著者はアルバート・アインシュタイン医科大学の人なんだけど、西洋の観点に偏ってる気がするなあ
私は趣味で漢方とかやってるけど、この著者が非難しているようなものが現在でも薬として使われてるし
本から抜き取ってみると・・・
放血、ヒルに吸血させる方法、アリ、ミミズ(地竜)、髪の毛(血余炭)、人尿(童子尿)、シカの角(鹿角)、動物の排泄物(夜明砂)、胃石(牛黄)
で、この著者はキニーネを含むキナの樹皮が熱性の感染症の治療法として導入された、これが偽薬にあらざる最初の医薬品と考えることができるかも知れないとか言う
しかし、遥か昔に中国人は常山(マラリアに効く)という生薬を見つけているしなあ