・ストレスが高まるとともに偽薬も効力を高めることを示す証拠はかなり存在する
手術の前後及び最中は通例強い不安やストレスに満ち溢れた状況である
・25年前(1936)のマサチューセッツ総合病院では、腹壁切開は結核性腹膜炎を阻止する何らかの力があるとする発言が真剣に行われていた
そのわずか数年前には、骨盤内炎症疾患を治療するには、「腹部を開いて、光と空気をちょっと入れれば良い」と年配の外科医が話しているのを耳にすることが出来た
さらにその少し前には、てんかんの治療として結腸の手術が数多く行われていた
現在施工されているいずれの手術が、次の世代にこれと同じ運命を辿ることになるものだろうか?
・狭心症治療目的の内胸動脈結紮、1939フィエスキの示唆で始まり、後にアメリカで熱狂的に取り上げられた
犬を対象にした実験から、内胸動脈結紮は「心臓外の乳房循環から冠動脈循環に至る小さな血流を付加的に生み出した」と研究で述べられた
今日では、内胸動脈結紮が心臓の血流を増す信頼のおける証拠はない
それどころか、犬に内胸動脈結紮しても、実験的に起こした冠動脈閉塞を阻止できないことを示す実験的証拠が得られた
偽薬手術(皮膚切開)でも、作業耐性とニトログリセリン摂取量の顕著な減少が観察された
新しい手術でも、このような「説得力ある」客観的要素を用いて記述できるのである
(同じ手術でも)熱心な外科医は懐疑的な外科医の4倍近くの患者を「完全治癒」させた
外科医がその外科医の現実を創造してるんだな
・人間の場合、実験的に発生させた通常の痛みはモルヒネで軽快できないのに対し、病的な起源を持つ痛みの場合にはモルヒネは必ずある程度反応するのである
「ある種の薬物は、必要条件とされる心理状態が存在する時に限り、効力を発揮する」という原理の有力な証拠がある
この原理は外科手術にも当てはまる
・こうした偽薬治療というか、新しい手術法が導入されてから評判が落ちるまでの期間が、合衆国では2年ほどと、驚くほど短いことに注目すると興味深い
そうした手術法は優れた実験計画を持つ二重盲検法的研究により消滅の憂き目にあう
組織化された医学にとって、専門的角度からの疑問は、その治療法が意図された効力を持つかどうかではなくて、それが物理化学的原因を持っているかどうかなのである
でも、病める一般人からすれば、効力を持つかどうかが重要だよねえ
例えばメスメリズムが信頼に値しないとして却下されたのは、効力という観点からでなく、磁気流体を始めとする物理的メカニズムを実証することができなかったため
でも、結局はその効力ごとメスメリズムは抑圧された
組織化された医学にもっと柔軟な態度があれば、多くの一般人に利益があったであろう
激痛を持つ患者に(偽薬の投与を隠して)モルヒネと偽薬を交互に投与する実験、半数はモルヒネから、もう半数は偽薬から
偽薬の場合には、モルヒネの効果が最低になる時に、つまり最も痛みの強い第一回時の投与で、効果が最高になる
一回目投与では、モルヒネで52%、偽薬で40%の患者が痛み軽減、偽薬の効果はモルヒネの77%
四回目投与では、偽薬の効果はモルヒネの20%
痛みが強いほど偽薬は効く
不安神経症患者に少量の副腎皮質ホルモンと偽薬を投与する実験でも、不安が強い者ほど偽薬がよく効く
ストレスが強いほど偽薬は効く
痛みや不安もストレス
・二重盲検法で、薬物被験者は特定の副作用が出現するかもしれないので注意するよう告げられるが、それが出なかったら「自分には偽薬が投与されたと考えるか、その薬物に効果がない」と考えるだろう
逆に、副作用を感じたものは「その薬が効いた」と考えるだろう
ゆえに、副作用は患者に偽薬の効力を高める作用をもっているかも知れない
・アンフェタミンと抱水クロラールの効果は、被験者に与えた教示によって左右されるが、偽薬では影響がない
この2薬品の刺激が暗示による期待との関連で解釈される
軽い副作用は医薬品の効果を高めるのに対して、強い副作用がある場合や副作用が全く無い場合にはその効果も低くなる
活性偽薬(ニコチン酸)が非活性偽薬(乳糖)よりも有意に強いうつ状態を健常者に引き起こす
ニコチン酸はナイアシン、ビタミンB3であり、ナイアシンフラッシュという副作用がある
うーむ、オーソモレキュラー療法とかだと、ナイアシンは鬱に効くって話なんだけどねえ
この場合は偽薬(ナイアシン)とともに「この薬で鬱になる」という暗示を入れてるんだけだろうが・・・
オーソモレキュラー療法も、「この薬で鬱が治る」という暗示でナイアシンを活性偽薬として使ってるだけなのかも・・・
硫酸アトロピンで口内乾燥症を起こし、それを肯定的に説明すると治療効果が上がり、否定的に説明すると治療効果が下がった
医薬品は偽薬効果増幅剤なのではないか?