アラフォー賢者の気ままな引き寄せライフ~第四密度行ったら本気だす~

気ままにスピ雑談、多少は人が見て勉強になりそうなことを書いていく

(本)ブライス家の人々 家族療法の記録、その三

・クローディアの数々の問題、デビットとキャロリンは自分たちだけでこの自体を解決するのは無理だという結論に達し、専門家の援助を求めることを決心した

一家のかかりつけの家庭医に相談した結果、知り合いの児童精神科医を勧めてくれた

たとえ思春期問題の専門家が治療すると言っても、クローディアにとっては長い屈辱の時間に過ぎなかった

その医師は同僚の心理臨床家に心理テストを依頼した

精神科医と心理臨床家はクローディアが十中八九分裂病だと断定した。さらに何年も集中的な治療が必要だろうと付け加えた

今でも大体そうだろうと思うが、統合失調症と診断されれば「お前の脳みそがおかしいんだ」ということになり、それをおクスリで弄くり回そうという方向に行く

そこに、親に問題があるとか、家族全体の問題がある、いう発想はない

なので、現代の精神医療は家族の「息子・娘が頭おかしいだけで、ウチはマトモですよ」という言い分」(スケープゴート戦略)に協力していると見なすことができる

家族療法的観点からすれば、そのような家族は全然マトモではない

さらに、この見方の延長線上に、そのマトモでない家族を保護しようとする精神医療体制及び社会というのもマトモでない、という発想が出てくるのは明らかだ

家族療法が出来てから大分時間が経っているが(この本がアメリカで出たのは1978)、いまいちこのような見方が広まらないのは、家族のみならず社会に対しても挑戦的だからだろう

 

ふつう家族療法家に巡りあって期待することと言えば、大抵の人は情緒障害の娘が新しい治療法で治ることだと答えるだろう

しかし、家族療法家の見方はまったく別のものであった

彼らは家族全体におけるこれまでのもっとも基本的な事柄、例えば成員相互間の因果関係や動機付けのあり方、あるいは個々の自立や心理的成長とは一体何であるかなどといったことを問う治療法に辿り着いたのである

 

確かに彼フロイトは人間の内面を深く凝視した

しかし、社会環境にはほとんど目を向けることがなかった

フロイトの症例を読み返してみると、同じような不安症状を持つ患者がやはり同じような問題を持つ家族の一員であることが分かる

彼がどうしてこの点を見落としたのか、驚くばかりである

フロイト自身が自分の家族に支配されてたからじゃないの?

つまり、家族を見抜くこと自体がフロイトの自分の家族から抜け出ようとする試みと同値であった

モートン・シャットマン「魂の殺人」、フロイトの最も有名な患者の一人であり、「誇大妄想」を示す患者に、家族による幼児期の甚大な被害のあとを認めることができる

患者の父親は当時の有名なしつけの専門家であり、患者がそういった方法でしつけられたことは、精神症状として現れる「妄想」からも明らかである

しかし、フロイトはこの妄想を患者の複雑な心の構造によるものだとする仮説を立てて説明した

ややこしいな、アリス・ミラー「魂の殺人」って邦訳本があるんだよ(原題がFOR YOUR OWN GOODなので、邦題と全然違うんだけど)

ここで言ってるのは、モートン・シャッツマン「魂の殺害者―教育における愛という名の迫害」のこと

この本では、ナチスのちょい前にドイツで流行ったシュレーバー教育ってのを取り上げている

そして、またややこしいんだが、アリス・ミラー「魂の殺人」でもこれを取り上げている

アリス・ミラーが指摘するには、このサディスティックな「しつけ」がナチスのような残虐非道を受け入れる精神を持つ大人を生み出したのであろう、という

フロイトが情緒障害を誘発する一因として、人生初期における家族経験を探求したにも関わらず、それが幻に終わったのは大変残念なことである

あと、アリス・ミラーは、フロイトが児童への性的虐待問題を直視しようとしなかったので、全ての問題をその人の心の構造で説明しようとした(幼児性欲理論)、と指摘しているのも知っとくといいだろう

これが本当だと、この時代から、精神医療体制というのは、親や家族のスケープゴート戦略に協力しようとしてきたことになる

 

さらに、フロイトの悔やむべき点は、人間の心的側面のみを問題にし、人間の全体性を軽視したこと

芸術、音楽、詩、思想などのより高尚なものを求める努力は、単にその動物的な部分を懐柔するための悪あがきにすぎないとしか受け止められなかった

我々の社会では医学は名誉ある地位を得るに相応しい伝統を保つために、医学が知らず知らずに情緒障害を懲罰的に扱う社会に味方してしまうことがある

この本が出た当時では「知らず知らず」と言ってもいいのかも知れないが、まあ、現代においては確信犯だろ

本人には全く責任がないのに、精神的な負担で苦しむ人を治療師て変化させようといっそう圧力をかけるのは、どこか奇妙ではないだろうか

要するにクローディア個人が病気なのではなく、問題は家族にあったわけである

 

でも、まあ、アレだな

結局、「精神科医に金払うのは誰ですか?」ということを考えてみると、それはもちろん親であって、息子や娘じゃないんだよね

商売ってのは基本的に金をくれた人の利益になることやるもんであるということを考えるならば、医者が息子や娘のことを考えてやらなきゃいけない筋合いはないわけだ

親としてみれば、「息子や娘の頭がおかしいだけであって、親側には何の問題もない」という専門家の保証ってのが一番楽であり、それを望んでいるんだろうから、それに答えるってのが商売の本懐だよな

さすがお医者さんは頭がいい